DAOの始め方
著者: Bud Hennekes
DAOがWeb3プロジェクトやビジネスを立ち上げる手段としてますます人気を集めるにつれ、開発者やビルダーもこれに注目するようになった。それは当然のことだ。
しかし、アイデアから実際にDAOを立ち上げるまでには、具体的に何が必要なのだろうか。
初めてDAOを作る際の基本を学びたいなら、DAOの構造から必要なツールまで、一通り網羅して解説する。
本題に入る前に、DAOのメリットとデメリットについてはすでに十分検討済みであり、その知識を実行に移す準備ができているものとして話を進める。また、技術的にはさまざまなブロックチェーン上でDAOを構築できるが、本稿執筆時点ではEthereumがDAO構築の標準となっているため、ここではEthereumネットワークを使って解説する。
1. DAOの構造を決める

コードを1行書いたり、DAOツールへの登録を始めたりする前に、DAOを作る理由とその構造をじっくり検討する時間を取るべきだ。
すべての企業やプロジェクトが分散型の構造での運営に適しているわけではないことを忘れてはならない。
a16zはDAOの構築と運営に関するブログ記事の中で、DAOがうまく機能すると必ずと言っていいほど過剰な熱狂が生まれ、人々はあらゆる組織、コミュニティ、プロジェクトにDAOを当てはめようとする傾向があるが、多くの場合それは最適なアプローチではない、と述べている。これは2017年の仮想通貨ICOブームと似ている。
もちろん、これはDAOを始めるべきではないという意味ではなく、正しい理由に基づいて始めることを確認するためのものだ。そこで、始める前に考えるべき質問のリストをまとめた。
すべてに答える必要はないが、勢いに任せて立ち上げる前に、各要素についておおまかな考えを持っておくべきだ。
- あなたのDAOは何を達成したいのか。短期的、長期的なビジョンは何か。
- あなたの組織には分散型の非階層的な所有構造が必要か。
- あなたのDAOはどのように意思決定を行うか。
- あなたの業界にDAOで解決できる現在の課題はあるか。
- DAOはあなたのコミュニティ、ユーザー、顧客にとって利益になるか。
- DAOを立ち上げずにビジネスを構築することはできるか。
- あなたが目指すことをすでに成し遂げた人はいるか。
- DAOを立ち上げるために利用できる技術的・開発リソースは何か。
- 仮想通貨市場全体の避けられない荒波を乗り越える準備はできているか。
- あなたのDAOはコミュニティ主導か。そうであれば、コミュニティがビジョンの実現にどう貢献すると考えているか。
この非常に重要な最初のステップを飛ばしたくなるかもしれないが、これらの質問に答えることは、最終的に次のステップ、つまりトークン配分と報酬の決定に役立つ。
2. 構築したいDAOのタイプを決める
DAOはまだ黎明期にあるため、まだ検証されていない用途が数多く存在する。とはいえ、目標に応じて実践的に取り得るパターンはいくつかある。
ステップ1の質問に答えることで、何を達成したいのかが明確になるはずだ。次は、どのタイプのDAOを検討したいかを決める段階だ。
LedgerはDAOの具体的なタイプの例をまとめた優れた資料を公開しており、一読を強く勧める。以下のタイプのDAOが取り上げられている。
- Protocol DAOs
- Grant DAOs
- Social DAOs
- Collector DAOs
- Venture DAOs
- Media DAOs
- Social Media DAOs
- Entertainment DAOs
上記の質問リスト(すべてを網羅しているわけではない)に加えて、従来のビジネスとDAOの共通点を考えることも役立つ。
"many DAOs and other digitally native organizations have properties similar to Nation-State and City-State governance. By identifying these communities and working with them on the Govrn Governance Model, we can keep improving the tools while waiting for the physical governance world to be ready for DAO Tooling." - Govrn DAO
あなたのDAOが必ずしも国家や都市国家のガバナンスの枠組みで運営される必要はないが、この文脈は最初のDAO構造を大まかに描く上で参考になる。
3. DAOトークンのユースケース
DAOで達成したいことと構築したいDAOのタイプが明確になったら、次はコミュニティとの関係と長期的なビジョンに即して、トークン配分について戦略的に考える必要がある。
これを最初から正しく設定しておくことで、効果的に資金調達ができ、初期サポーターやコミュニティからの参加意欲を高めることができる。
DAOトークンは以下の用途に使える。
- 報酬とインセンティブ
- DAOガバナンス、およびDAOの方向性に関する投票
- コミュニティ向けの他の特典や機会のアンロック
DAOトークンにより、ユーザーは会社の成功に本当の意味で関与し、成長に積極的に参加できるようになる。
DAOトークンがガバナンスや投票権を付与する必要は必ずしもないが、多くの場合、重要な問題について投票を行うことはコミュニティを最優先することにつながる。
例えば、最近立ち上げられたNFTマーケットプレイスであるLooksRareは、OpenSeaがおそらくトークンを発行しないだろうという状況を利用し、NFTコミュニティに直接アプローチすることを選んだ。
彼らのトークンは、NFTを販売したクリエイターと購入したメンバーに報酬を与え、取引手数料をステーカーに分配し、販売の瞬間にクリエイターへ即座に支払いを行う。
$LOOKSトークンを保有していても会社の方向性に対する積極的な投票権が得られるわけではないが、取引で得られた手数料の100%がユーザーと$LOOKS DAOトークンをステークしているユーザーに分配される。
LooksRareは厳密にはDAOとは見なされないかもしれないが、コミュニティ第一のアプローチにより驚くほど急速な人気の高まりを実現した。
トークンの使われ方の別の例として、ENSコミュニティは最近、数年前にSNSで発言した心無いコメントを理由にENS DAOのオペレーション責任者兼DAOスチュワードを解任する投票を行った。そのメンバーがチームに残るべきかどうかが投票にかけられ、決定が下された。
あなたのトークンはどのように使われるのか。会社の方向性を決める投票に使われるのか。ビジネスの成功に応じた報酬のためにステークできるのか。
DAOトークンの明確なユースケースを持つことは、長期的な参加意欲と成功にとって不可欠だ。
4. DAOトークンの供給量、配分、報酬を決定する
10億トークンと100万トークンの違いはゼロの数だけの問題に見えるかもしれないが、価格設定には一定の心理的効果が働く。
仮想通貨価格の心理的影響に関する調査によれば、
“Low-priced CCs have much less volume, much less market cap, and lower past monthly and quarterly return. Interestingly, low-priced CCs have higher numbers of coins, and as a result, their coins are more traded (despite their lower trading volume in US dollars).”

したがって、トークン供給量のちょうど良いバランスを見つけることは特に重要だ。参考までに、ENSやUniswapなどが自社のトークン供給量と配分をどのように決めたかを読んでみるとよい。
あなたの目標とコミュニティを完全に把握していない限り、明確な正解・不正解はないが、数百万から数億の範囲で妥当な数を選び、根拠のない高い初期コイン供給量を避けるのが無難だ。
DAOトークンの配分
選んだ初期コイン供給量に加えて、トークンの配分も同様に、あるいはそれ以上に重要だ。

コミュニティに報酬を与えることと、コミュニティトレジャリーに十分な資金を確保することの間には微妙なバランスがある。ビジネスとして、目標達成に十分な運転資金を確保しつつ、初期ユーザーやサポーターに報酬を与えることが重要だ。
DAOの登場はまだ比較的新しいため、多くのプロジェクトがDAOの仕組みや、トークンを配布しトレジャリーにリソースを配分する新しい方法を試している。
とはいえ、DAOによってトークンのユーティリティのユースケースは異なり、それが初期配分に影響を与える。
"In some instances such as Uniswap, token holders can vote on distributing a portion of the fees that the protocol collects amongst themselves. In other protocols such as Compound, token holders can vote on distributing these protocol fees towards bug fixes and system upgrades." - ConsenSys blog
これがステップ1が重要だった理由だ。
トークンのユースケースと配分を理解することで、ビジネスを最適に成長させながら、ユーザーとコミュニティのために価値を生み出すことができる。
BarnbridgeDAOはガバナンスに関する経験を振り返り、次のように述べている。
"Splitting out the governance from the start helped us to have an equitable vote across numerous parties where no one person could commit a cardinal sin in the early stages for distribution. It helped keep us honest and avoid proposals that would unilaterally benefit a single party. It required us to vote in every seed round fund provider and that forced us to look into each one for the merit they brought to the project. We stopped thinking of capital as pure capital but as what the people who would be using their capital to fund the seed round, in turn getting a seat at the voting table, would vote. It forced us to think about what their incentives were and if we wanted those people involved early on in the project."
5. DAOを構築する
DAOの構造、タイプ、トークンのユースケース、配分を決定したら、いよいよDAOを構築する段階だ。DAOスタートアップは自前のシステムを構築することもできるが、DAOの法的枠組みの整備、DAOトークンの発行、チームや創設メンバーの設定、DAO名の決定などを行うためのDAOスタートアップツールやテンプレートも数多く存在する。
DAOの構造を確立するための代表的なEthereum DAOツールには以下がある。
- Aragon - ガバナンスや紛争解決を含むオールインワンのDAOツールキット
- Colony - 90秒で立ち上げられるプラグアンドプレイのDAOプラットフォーム
- Syndicate - 投資DAOの立ち上げに特化したツール
- OpenLaw - Ethereumと連携する法的文書を素早く作成できるツール
- DAOstack - DAOを立ち上げるためのモジュール式オープンソースツールスイート
- Orca Protocol - 人々が分散的に組織化するのを支援する「人第一」のプロトコル
DAOのセットアップが完了したら、次はトレジャリーツールを整備し、トークン、資金調達、トレジャリー運営を規模に応じて効果的に管理できるようにする段階だ。
6. DAOトレジャリーを確立する
DAOトークンの初期コイン供給量と配分を確定したら、次はDAOの構造内で資金を安全に管理できるようにする必要がある。
検討すべき選択肢は数多くあるが、Safe(旧Gnosis Safe)は、複数の人が署名しなければトランザクションが実行されないマルチシグウォレットのセキュリティを活用し、DAOのトレジャリーを保護する上での業界標準となっている。Safeは2017年からEthereumエコシステムにセキュリティソリューションを提供しており、コミュニティ内で非常に活発に活動している。
CabinDaoがGnosis Safeを選んだ理由について次のように語っている。
"We chose Gnosis Safe as our crypto-native treasury platform. Gnosis provided two critical features: The ability to have each distribution of funds approved by multiple team members (a.k.a. Multi-signature), and a central location to preserve a mixture of funds: Ether and the social token."
DAOトレジャリーツール
DAOは従来の企業と同様に、運営費(DAOツールのコストなど)や戦略的投資(パートナーシップなど)に充てるための資金をトレジャリーとして管理する。
DAOの資本を保護するため、トレジャリー管理ツールを使うことで、単一の当事者が資金の使い方について一方的な決定を下せないようにし、資本が真にDAOによって所有されるようにする。
SafeとそのDAOガバナンスツールキットであるSafeSnap以外にも、検討に値する代表的なEthereum DAOトレジャリーの選択肢を以下に挙げる。
- Parcel - 支払い、給与、支払いリクエストを含むコスト効率の良いトレジャリーツール
- Multis - Safe上に構築されたオールインワンのDAOトレジャリー管理ツールキット
- Coinshift - Safe上に構築されたアカウント、マルチシグツール、支払い、会計機能
- Llama - DAO向けのマルチシグウォレットdApp
- Superfluid - サブスクリプション、給与、収入ストリームを管理するためのDAOツール
- Juicebox - DAOの資金調達プラットフォーム
- Utopia - 支払い、会計、レポーティングを含むトレジャリー運営ツール一式
- Request - DAO向けの支払い、給与、会計ツール
この決定の重要性を踏まえ、時間をかけて検討することを強く勧める。技術的にはトレジャリーツールを後から変更することも可能だが、最初から正しく選んでおくのが望ましい。
選んだトレジャリーオプションは、資金を安全に保管し、必要なときに効果的に分配できる状態に保つ助けとなる。
Banklessニュースレターが的確に述べているように、「コミュニティトレジャリー、すなわち共有所有権こそが、Web3がもたらす大きなアンロックであり、DAOを価値あるものにしている。トレジャリーは、コミュニティが使命を達成するために資本を調整し、投入する仕組みだ」。
DAOガバナンスツール
ガバナンスとは、メンバーとトークン保有者が意思決定に直接参加するプロセスだ。分散型組織を効果的に運営するには、トレジャリー資金の分配、支出、配分方法など重要な問題について、トークン保有者が投票できる信頼性が高くアクセスしやすい方法をDAOが備えている必要がある。
代表的なEthereum DAOガバナンスツールには以下がある。
- Snapshot - ガバナンス提案を提出・投票するプラットフォーム
- Tally - オンチェーンDAOガバナンス提案の閲覧、投票、投票権の委任
- Sybil - Uniswapが構築したオンチェーンガバナンス・委任ツール
- Commonwealth - 議論、投票、資金調達のためのオールインワンプラットフォーム
- Boardroom - シームレスなDAOガバナンスツールキット
- Paladin - ガバナンストークンの預け入れ、借入、管理
改善の提案、決定に関する議論、重要な議題への投票はDAO運営の中核をなす。メンバーがウォレットを接続し、トレジャリーやプロトコルに関する重要な問題について提案・確認・投票できるプラットフォームを整備することは、DAOにとって不可欠なツール環境だ。
7. コミュニティを構築する
理論上はColonyのようなツールを使えば90秒でDAOを立ち上げることも可能だが、実際には、成功しているDAOのほぼすべてが、熱心で活発なコミュニティから始まっている。コミュニティの構築こそ、最初に取り組むべきことだ。
DAOを構築することを決めたなら、その成功を左右するのはコミュニティだ。コミュニティ構築の詳細なコツについては別の記事に譲るが、もしすでにコミュニティの構築や現在のコミュニティの支援に積極的に取り組んでいないなら、最初から大きな不利を抱えていることになる。
一般に思われているのとは異なり、コミュニティ構築とは単にDiscordやTelegramグループを持ったり、Crypto Twitterに投稿したりすることではない。活気あるコミュニティは、ユーザーとサポーターを第一に考えるビルダーやWeb3エンスージアストの結果として生まれる。
暗号業界で成功を収めた匿名のビルダーがかつてこう言った。
“The best time to build a community was years ago. The next best time is now.”
DAOコミュニティ構築ツール
組織構造が分散化され、会話の中心が単一の場所ではなくなると、コミュニケーションの重要性は劇的に高まる。
世界中に住んでいる可能性のある人々に対応するため、DAOにはメッセージング、フォーラム、ブログ、マーケティングプロモーション、トークンゲーティング、多言語対応など、あらゆる種類のコミュニケーションに対応できる、拡張性があり、アクセスしやすく、管理しやすいコミュニケーションプラットフォームが必要だ。
代表的なEthereum DAOコミュニケーションツールには以下がある。
- Discord - チームコミュニケーションの主要な場
- Twitter - DAOやWeb3企業にとって最も重要なソーシャルメディアプラットフォーム
- Telegram - 大小問わずDAOに適した、業界をリードするメッセージングツール
- Discourse - DAOやWeb3スタートアップ向けの拡張性のあるフォーラムプラットフォーム
- Signal - プライバシーを重視する人々に好まれるプライベートメッセージングアプリ
- Medium - セルフホスト型ブログの代替となるブログ公開プラットフォーム
- Mirror - 記事公開・資金調達プラットフォーム
- Collab.land - DAOメンバー限定のDiscordチャンネルを作成するためのトークンゲーティングツール
- MintGate - トークンゲート付きランディングページを構築するためのEthereumベースのプラットフォーム
DAOの構造に関わらず、メンバーは規模に応じて効果的にコミュニケーションを取る必要があり、これらのDAOコミュニケーションツールは分散型チームが24時間365日関与し続けることを可能にする。
もっと選択肢を探したいなら、DAOmasterの人気DAOツール一覧を確認してみてほしい。
今日からDAOの構築を始めよう
Decentralized Autonomous OrganizationsのようなWeb3のイノベーションは、スタートアップ、クリエイター、オンラインコミュニティに数多くのエキサイティングな可能性を開いている。
DAOを立ち上げる際は、これらのステップを念頭に置き、さまざまなDAOツールを検討し、そして常に最大の資産であるコミュニティに焦点を当てるべきだ。
適切なツール、トークノミクス、チームがあれば、あなたのDAOには成功のあらゆるチャンスがある。
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